平成19年度第2回定例研究会のご案内(7月19日)
題目:「世の中はなぜなんとかもっているのか?~東洋思想の可能性~」
日時 7月19日(木)14:00~16:00
場所 工学部8号館大会議室(736号室)
報告者 安冨 歩(東洋文化研究所准教授)
司会 玄 大松(東洋文化研究所准教授)
討論者 森本一夫(東洋文化研究所准教授)
報告要旨
私は、学部時代に森嶋通夫・置塩信雄のマルクス数理経済学の勉強をするところから研究を開始し、短期的に銀行で働いたのち、満洲国金融史の研究に転じ、それを『「満洲国」の金融』(1997年)という本にまとめました。同時期に、複雑系科学とよばれる分野の研究に着手し、それを『貨幣の複雑性』(2000年)という形で出版しました。その後、中国黄土高原郷村でのフィールドワークを通じ、人間のコミュニケーションと生態環境の関係を考えるなかで、「ハラスメント」と「やわらかな制御」という考えに到達し、『複雑さを生きる―やわらかな制御―』(2006年)を著しました。また、ハラスメントの概念について本條晴一郎氏と徹底的な考察を加え、共著で『ハラスメントは連鎖する』(2007年)という本を書きました。
本報告では、「世の中は、こんなに複雑で、うつろいやすいのに、なぜ、崩壊することなく存続しているのか」という私の問いに対する、現時点での答えをお話したいと思います。『論語』の思想、ガンディーの思想、網野善彦の「無縁」の概念、などの重要性に言及し、そこから、貨幣の存在構造についても論及いたします。
平成19年7月9日
東京大学東洋文化研究所
研究企画委員会