平成18年度第6回定例研究会のご案内
帰属カテゴリー、ワード・ポリティクス、リアリティ
〜現代ネパールにおける社会生活の民族誌の為のメモランダム
日 時:3月15日(木)午後2時〜4時
場 所:東京大学工学部8号館7階会議室
報告者 名和克郎 (汎アジア部門)
司会者 菅 豊 (汎アジア部門)
討論者 玄大松 (東洋学研究情報センター)
要旨
1990年以降のネパールでは、民族、カースト、宗教、或いは政党といった、 様々な人の帰属カテゴリーに基盤を置いた運動が顕在化・活発化し、自らの立場を主張し要求を正当化するための従来とは異なる語彙や語り口、さらには運動形態が広く流通していった。村落レヴェルでの人々の生活は流動性を増したが、派閥を含む既存の社会的機構は新たな制度や概念と結びついて活性化しているようにも見える。マオイストの「人民戦争」開始以降、当事者、ジャーナリスト、人権団体等から、膨大かつ雑多な情報が、しばしば上述の新たな語彙と語り口を伴って発信されてきたが、こうした情報の氾濫にも拘わらず、或いはそれ故に、状況を十全に知ることは極めて困難になっている。実際のフィールドワークに基づいてこの問題を扱った人類学者の幾つかの論文もまた、状況 を読者に伝える困難さに直面している。
本発表では、様々な文献に加えインターネット上で検索できる情報をも利用 しつつ、如上の状況に関して暫定的な交通整理を試みたい。なお、報告者は 2001年以降ネパール滞在時にカトマンドゥ盆地の外に出ていないため、報告者自身による調査データの提示はないことをお断りしておく。
平成19年1月24日
東京大学東洋文化研究所
研究企画委員会