東洋文庫アカデミア「地図から見る近現代の中国」
【本講座の概要】
ヨーロッパで生まれた近代地図は20世紀初頭の日本に伝わり、中国へ流入しました。本講座では、20世紀前半の激動の時代に製作された日中両国の各種地図を通じて、近代中国の自己像および世界認識を探り、加えて日中関係史の変遷をたどります(東洋文庫所蔵の地図を実際に見ながら、具体的な製図知識を交えて解説します)。
【講師プロフィール】
村田雄二郎(むらた ゆうじろう) 東京文庫研究員、同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授。中国近現代史。近著『語言·民族·国家·歴史——村田雄二郎中国研究文集』(重慶出版社)。
譚璐美(たん ろみ) 作家。『中国共産党を作った13人』『戦争前夜──魯迅,蒋介石の愛した日本』など著書多数。近著『中国「国恥地図」の謎を解く』(新潮新書)。
【講座日程・内容】
第1回目(対面):9月24日(土)14:00-15:30
総論 (村田雄二郎/譚璐美)
東洋文庫所蔵の地図の展示。「支那現勢地図」「大清帝国全図」「中華国恥地図」など。
第2回目(対面):10月8日(土)14:00-15:30
1900年「支那現勢地図」孫逸仙,東邦協会刊 (東洋文庫所蔵) (譚璐美/村田雄二郎)
中国の革命家の孫文が日本へ亡命中、日本人支援者に依頼して製作した鉄道図です。
1911年に辛亥革命が成功した後、新国家建設の経済政策の柱としました。
第3回目(対面):10月22日(土)14:00-15:30
1905年「大清帝国全図」 (譚璐美/村田雄二郎)
二十世紀初頭、上海商務印書館と日本の金港堂が設立した日中初の合弁出版社が製作し、日中両国で同時発売されました。
地図製作者は「民間地図の開祖」と呼ばれる木崎盛政。中国では「近代地図のバイブル」として珍重されています。
第4回目(対面):11月5日(土)14:00-15:30
1920年代「中華国恥地図」武昌・亜新地学社刊(東洋文庫所蔵) (村田雄二郎/譚璐美)
「国恥地図」とは、清朝時代に中国が列強に奪われた領土を「国の恥」と考え、中華民国時代に作られた政治的な地図となります。
国民教育や小中学校教材に用いられました。本回では各種国恥地図を紹介します。
亜新地学社は、地図製作の名家・趨家一族が経営し、本品は「国恥」とは別に、趨家の伝統技法を駆使した逸品とされています。
*製図アナリストの辻野民雄氏、または平凡社地図出版の水谷一彦氏による製図解説も予定しています。
第5回目(対面):11月19日(土)14:00-15:30
1936年「海疆南展後之中国全図」白眉初作、北平建設図書館刊(譚璐美/村田雄二郎)
「地図は領土の主張」であることの証左となる地図です。今日の中国が南シナ海の領有権を主張する根拠のひとつに挙げています。
【会場】
公益財団法人東洋文庫。