「日本人研究者の拘束」を憂慮し、関連情報の開示を求めます
2019年10月29日
日本人など外国人が中国で拘束される事件が相次ぐ中、9月に北京を訪問した日本人研究者が中国当局に拘束されていることがこのほど報じられ、われわれは言葉にし難い衝撃を受けました。ここに深い懸念を表明し、関連情報の開示を強く要求いたします。
中国社会科学院近代史研究所の招聘に応じ、北京を訪問した中国近現代史を専門とする北海道大学教授を拘束しておきながら、関係当局は拘束事由その他、背景事情を一切明らかにしていません。隆々たる経済成長を遂げた中国は、「人類運命共同体」の建設を主唱する大国になりました。しかし、理由が不明なままの拘束は、国際社会では到底受け入れられません。その結果として中国のイメージに大きく傷がつき、人々の不信感が増長することは避けられないことでしょう。
国民の相互理解を増進するために双方向の国民交流を推進することには、両国の首脳が合意しています。今般来日した王岐山国家副主席と福田康夫元首相との会談では、学術交流を含む文化交流の促進で意見が一致したと報じられています。しかしながら、本件を受けて、中国訪問をキャンセルしたり、交流事業を見直したりする動きが広がっており、既に日中間の学術交流には好ましからざる影響がたち現れています。「新しい日中関係を考える研究者の会」として、本件に深い懸念と強い関心を抱く所以です。
われわれは、「領事関係に関する日本国と中華人民共和国との間の協定」(日中領事協定)第8条に基づき、中国の関係当局がこの日本人研究者の逮捕拘留の理由を明らかにすることを求めます。現実に、本件は日中関係の健全な発展に大きな影を落としています。中国側が日本側の危機感を理解し、善処することを切に望みます。
新しい日中関係を考える研究者の会