東洋文庫超域アジア部門現代中国研究班国際関係・文化グループ 2014年度第1回研究会のお知らせ
今年度の第一回研究会を下記の要領で開催します。今回はお二人の報告者に建国初期の人民代表大会制度に関する最新の研究成果を紹介いただきます。なお,今回の研究会は科研費基盤(B)「社会主義中国の憲政論・憲政体制を再考する──20世紀中国憲政史の視角から」(代表:中村元哉)グループとの合同研究会になります。
【日時】 2014年8月2日(土) 15時~18時
【場所】
財団法人東洋文庫2階 講演室1
【報告】
報告者1: 杜崎 群傑(中央大学)
論 題 : 中国における「選挙権威主義」体制を確立する手段としての「人民代表会議」制度
概 要 : 報告者はこれまで一次資料を利用し、中華人民共和国成立前後の中国共産党主導の代議機関たる「人民代表会議」と、これを中核として構築される政治構造について実証的に研究してきた。その結果、当時の政治体制は、選挙を権威主義的支配の手段としてのみ用いていたという意味で、アンドレス・スケドラーが指摘するような「選挙権威主義」(Electoral Authoritarianism)に限りなく近いものであったのではないかという仮説に至った。
本報告ではこうした一連の研究成果と仮説に基づき、さらに代議機関を分析する上でのいくつかの視角を提示した上で、中国共産党が当時の「人民代表会議」制度にどのような機能を持たせようとしていたのか、また結果としてどのような政治体制が完成していったのかを検討する。その際、中国共産党の目指した政治体制をより明確化するために、党結成以来の中国共産党の代議機関に関する議論の歴史的淵源をも検討する。
その上で、本報告では「人民代表会議」制度が最終的に中国における「選挙権威主義」体制の成立にとっての重要な手段となっていったことを確認するとともに、そこに見られる当時の中国共産党の権力の「強靭性」と「脆弱性」を明らかにする。
報告者2: 水羽信男(広島大学教授)
論 題 : 第1回全国人民代表大会と中国民主建国会
概 要 : 1954年の「中華人民共和国憲法」の制定から第1回全国人民代表大会の開催にかけては、社会主義への過渡期における中国なりの憲政・議会制確立の努力がなされた時期であった。その過程で、中国共産党はさまざまな方法を用いて民衆の教育・組織化にあたったと言われている。本報告は、この歴史過程を商工業者と彼らのイデオローグを組織した中国民主建国会の活動を通じて再考する。その際、民主建国会の活動だけでなく、そのリーダーである施復亮や章乃器らの言説もあわせて検討する。
連絡先:村田雄二郎(murata[a]ask.c.u-tokyo.ac.jp)