
近年の中国における史料の整理・公開および電子化の進展ぶりには瞠目するばかりだが,そうした研究環境の劇的変化に即応したタイムリーな本が出た。新しい史料を次々に開拓・発見するという研究の醍醐味を味わわせてくれるとともに,文献考証型の伝統的歴史研究にも再考・反省を迫る問題提起の書となっている。マニュアル本としても研究者必見・必携!(村田雄二郎)
高田幸男,大澤肇編著『新史料からみる中国現代史──口述・電子化・地方文献(オーラル・デジタル・ローカル)』東方書店,2010年12月,368頁,3800円+税, ISBN/ISSN 9784497210173。
近現代中国の研究において、大量に出版された史料だけではなく、出版されない史料を求めて現地社会に入るという新しい研究潮流が出現している。それは、中央や上部組織ばかり注目しがちな従来の研究に対して、「下から」の視点による研究への欲求の現れである。本書は、それらのなかから、①インタビューを史料として扱い歴史を叙述するオーラルヒストリー、②地方文献の活用、③史資料のデジタル化をテーマとして選び、これら新しい史料は、どのように収集し活用されているのか、どのような点に問題が存在するのか、その問題はどのように処理されるべきなのか、などを具体的な事例を通して論述した「史資料研究」の成果である。