佐藤千歳『インターネットと中国共産党──「人民網」体験記』,講談社文庫,2009年12月,ISBN:9784062765350,本体695円+税。
自分の目で見て,自分の頭で考える──言うは易く行うは難し。「北海道新聞」の記者として,人民日報社で一年間研修生活を送った著者は,さまざまな騒動や事件に遭遇しながらも,目で見た日常の中国を,淡々とした筆致で綴る。なまじ「中国慣れ」していないのが功を奏したのか,いまの中国の政治や社会の断面をいきいきと伝えるルポルタージュとなっている。とりわけ「上訪」文書をめぐる社内のドタバタ劇のくだりは秀逸で,大笑いしながら読み進めた。嫌中でも親中でもないスタンスが,さわやかな読後感を遺すのは,権力者であれ貧困者であれ,対等の個人として向き合おうとする,人間的共感能力のたまものであろう。記者に求められる(と思われる)この資質に恵まれた著者の,今後の活躍に大いに期待したい。なお,本書に対する以下の
書評も参照のこと。(村田雄二郎)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=1230&f=column_1230_004.shtml