夏征農・陳至立編『辞海』第六版(彩図本),全5冊,2009年9月刊,上海辞書出版社
調べ物に長く『辞海』1989年版(縮印本)を愛用してきたが,面目を一新したバージョンが出た。編集委員の顔ぶれが,殆ど江蘇・浙江出身者(とくに復旦大学出身者)でかためられているのに喫驚。民国期に陸費逵(りくひ・き)が中華書局で『辞海』編纂に取りかかり,毛沢東が1950年代に新編の任務を上海に与えて以来の物的人的基盤があるのだろうが,これだけ学閥(?)が鮮明であるのも珍しいのではないか。現代“海派“の心意気が伝わってくるような本作りである。そう考えると,題字が江沢民の揮毫にかかるのも意味深長に思われる。
新版は何よりピンイン順で並んでいるのがありがたい。
田中で引いてみると、「田中角栄」「田中絹代」「田中義一」「田中正平」と並び,最後に「田中奏摺」(田中上奏文)がくる。1989年版と比べると,田中角栄と田中絹代が増えているが,田中上奏文は記述内容に全く変化なし。中国では相変わらず(公的には)偽書説を採らないようだ。(村田雄二郎)