シリーズ20世紀中国史[全4巻]
飯島 渉・久保 亨・村田 雄二郎 編,東京大学出版会
第1巻 中華世界と近代 SBN978-4-13-025151-8, 発売日:2009年07月上旬, 判型:A5, 240頁
第2巻 近代性の構造 ISBN978-4-13-025152-5, 発売日:2009年08月上旬, 判型:A5, 248頁
第3巻 グローバル化と中国
第4巻 現代中国と歴史学
刊行にあたって
2009年は,中華人民共和国の成立からちょうど60年にあたる.社会主義化を進めた前半の30年と改革・開放により市場経済化を進めた後半の30年,それはまさに疾風怒濤のふきあれる激動の時代であった.そして21世紀の今日,中国は国際社会において決定的な重みを持つ存在となった.さまざまなメディアの報道のなかで,また政治学,経済学,社会学などの学問領域で,「中国」が論じられない日はない.
しかし,めざましい成長の反面,都市と農村,沿海と内陸などの地域的な格差は依然として大きく,また,階層間の貧富の格差も表面化している.そして,民衆の政治参加のあり方をめぐる問題や環境問題など,中国が直面する課題はまさに山積している.他方,台湾(中華民国)の国家や政治も大きく変化した.国民党から民進党へ,そして国民党へという政権交代は,台湾政治の流動化を象徴している.
では,中国社会(大陸の中華人民共和国や香港,台湾)は,いったいこれからどこに向かおうとしているのか? また,中国と日本や世界との関係は今後どのようになっていくのだろうか?
こうした素朴ではあるが大切な問いを発するとき,歴史をふりかえることこそ,実はもっとも有効である.なぜなら,現在の中国がかかえるさまざまな問題とは,社会主義化や改革・開放のなかで新たに登場したわけではなく,より構造的歴史的なものだからである.実際のところ,問題の多くは,近代に先行する清朝中国の時代に,さらには長い王朝体制のなかで蓄積されてきた「歴史の重み」を抱えている.現在の中国が直面している課題の多くは,社会科学的な,あるいは自然科学的な研究方法に歴史学的なアプローチを組み合わせることによって,はじめてその本質を理解することができるに違いない.
本シリーズは,以上のような視点から,「中華世界」と近代の邂逅,中国の直面した「近代性」の構造,さらには「グローバル化」のなかでの中国の変化に注目しながら,「20世紀中国」の歴史と現在の中国を重ね合わせて考える手がかりを示し,中国への理解を深め,ひいては,中国と日本,中国と世界のよりよい関係の構築に寄与することを目的としている.
編集委員 飯島 渉・久保 亨・村田雄二郎