近年,中国大陸の学術誌に論文を掲載する機会が増えてきたが,国際化を反映して,どの雑誌ももれなく英文の目次をつけている。英文要旨を付している感心な雑誌もある。いままで気にもとめていなかったが,自分の名前がどう表記されているか,調べてみて喫驚した。結果は,
A誌-1(2004年,北京):Yujiro Muratu
B誌(2004年,広州):Songta Yunilong
A誌-2(2007年,北京):Murada Oniro
C誌-1(2007年,広州):Chuntian Xiongerlang
C誌-2(2007年,広州):Tiancunxiong Erlang
D誌(2009年,北京):Yujiro Muratu
E誌(2009年,成都):MURATA, Yujiro
というわけで,なんと7例中正解は1つだけだった。不思議なのは,A誌やC誌のように,同じ雑誌なのに,異なる誤記がなされている例である。
それにしても,小さなスペル・ミスといったレベルではない。Songta(損太〜のび太の兄?),Yunilong(uni-龍〜多摩に生息する一角獣?),Oniro(鬼郎〜タマネギ状の幽霊?)などは抱腹絶倒で,見る者を楽しいことば遊びへと誘う。Tiancunxiong Erlang なんて,ちょっと偉くなった気がしてくる。C誌-1の例は,そり舌音の苦手な広東人の仕業に違いない。ピンインとして間違っているから,これは外文云々以前の問題ではあるが・・・。
メール疎通の容易な時代なのだから,ちょっと確認さえしてくれれば,防げるミスである。しかも,それほど難読でもない字面なのだから,1-2年日本語を勉強した人なら,正しく綴れるはずだ。最後のE誌は,編集者がちゃんと確認のメールをくれたというよい例。
雑誌の名誉のために断っておくが,編集者はいずれも学識をそなえた尊敬すべき方たちである。瑣事を針小棒大に取り上げて非議するつもりはない。複雑な漢字音をもつ日本語だから起こりうる問題なのかもしれないし,正直言って,日本語固有名の表記など“無所謂”と考えているのかもしれない。だが,やはり画竜点睛を欠くような外文の誤記は避けていただきたく,“切望中国报刊的编辑至少学好一门外文!“と叫びたくなるのだ。(MURATA Yujiro 記)